なんでHDRの話題がMac部の部活に…と違和感を感じる方も多いかもしれませんが、360度写真が広まるキッカケを作り、その扱いに関して長い間QuickTimeが先頭を走っていた期間があったため、、、
つまりこの記事はQuickTime講座の一部としてまとめました。
360度写真とHDRの関連性については本文に説明が書いてあります。
尚、この記事は当時のをそのままコピペではなく加筆修正してあります。
HDR撮影について
今iPhoneって7まで出ていたんでしたっけ。。
スマホに関心持っていないので現在HDRがどうなっているのかそのへんはよくわかっていないのですが^^;
iPhone4登場時に新しく追加された撮影機能でIT系記事でよく見かけていたものの一つにHDRがありました。
コンデジにも入っている一般的な機能ですし、試しに使ってみて違和感を感じ封印してる方もきっと多いかもしれませんが・・・
何れにしても既に一般の方への浸透度を深めた感のあるHDR(High Dynamic Range)ですけれど、HDRは360度写真撮影には欠かせない手法として古くから定着していたものです。
ここではHDRについて…その必要性を解説します。
HDRはとても応用範囲が広いものですけれど、これがどんな写真技法なのか調べてみようと単に"HDR"で検索しても、出てくる写真の多くはアートにかなり寄ったもので絵画的な印象を受けるかもしれませんし、確かにコンデジのHDRモードで撮ったものってビビッドな傾向だったり絵画調になる例もあったりして効果の一つ?みたいな・・・・
その正体をなかなかつかめないと思います。
その一方で、例えばカメラメーカーなどはピクセル単位で露光を調節してHDRを作成する特許申請していたり。
カメラメーカーが絵画のような絵を撮るための機材を?…と、ここでも不思議に思う方がいるかもしれません。
そこでHDRについて、その性質と利用法… 360度写真撮影での必要性についてまとめておきます。
HDR ( High Dynamic Range )
ダイナミックレンジと付いてることから想像できると思いますけれど、もう少しわかりやすい表現で言うとコントラスト比です。
Photoshopでヒストグラムを眺める機会の多い方はなんとなく感じている部分ですけれど、一般的にフィルムやデジカメで撮影された写真はこのレンジがそう広くはありません。
そのためにこの限られたレンジを撮影対象に合わせてシフトするという意味で露出を設定するという概念が存在します。
このように写真を撮る時に対象物を適性な露出でおさえるために操作を行っているのは機械的・数字的な見知から言うと限られたダイナミックレンジという許容範囲内におさめる工夫であるとも言えます。
もちろんその”制限”を逆に利用してカメラマンの意図を絵にこめる等の部分が大きいからこその写真ですし、その認識が一般的なのは言うまでもありません。
ここはその一般的に認識されてる通常の写真撮影とは一旦離れて別の話となります。
そしてHDRが把握できた際にはまた「意図を絵にこめる」写真にHDRを利用していいと思います。アートなHDR写真が多いのも多分そういう帰結によるものかもしれません。
HDR撮影の実際
360度写真撮影専用のラインスキャンカメラ等では上の概念図のようにほぼ全ての範囲(完全な闇から太陽直視までを)をほぼ完璧な適正露出で1枚絵として一気に200Mピクセル以上のEquirectangular出力できる特殊なものもありますが、通常のカメラでHDR素材を撮影する際はブラケティングを行います。
カメラではAEB(Auto Exposure Bracket・自動段階露出機能)の表示になっています。
たいていは基準の露出を設定してそれを中心に+○段・−○段というように3回シャッターをきりますけれど、最小/最大EV段や最大AEB・EVレンジ、連写レート等の性能はカメラによって変わってきます。
またカメラによっては3段・5段・7段/18AEBEVレンジなどもあります(ここでは便宜上±2.0/3枚で説明しています)
尚、シャッタースピード・絞りどちらを操作するか選択しておきますが360度写真撮影では全方位に存在するモノが撮影対象になりますから、被写界深度が浅くなる(ピントの合う範囲が小さくなる)と都合が悪いためシャッタースピードを操作する設定で使うことが多いです。
また、360度写真撮影によく使われるレンズ(フィッシュアイ)の場合はF8あたりでないと解像度が出ません。
F11より大きくすると明らかに小絞りボケが出てきますから概ねF8〜F11が良いです。
プラス・マイナス何段ズラすかはまわりの風景を見て勘で決めますが、概ね±1.5〜±2.0が良いです。
何故範囲を広くする2.0以上にしないで±1.5もアリかと言うと、階調補間のためで…純粋に写真品質を求めるならこの値は小さい方が良いです。…が、対応できる明るさ範囲は狭くなりますのでバランスを考えて決めることになります。
カメラに備わっているブラケティングを使って360度写真素材用に水平方向6カット撮影をしてみたサンプルです。
各部分のクリックで拡大が見れます。微妙に明るさが変わっているのが確認できると思います。
各部分のクリックで拡大が見れます。微妙に明るさが変わっているのが確認できると思います。
HDR合成
スティッチソフトの多くが本来メインの写真の貼り合わせ処理と同時にHDR処理を行えるようになっていますから人間側はとりあえず露出を変えた360度写真用素材を撮るだけ!これで360度写真を完成させることもできます。
またHDR合成専用のソフトもいくつか出ています。
手作業で行うのが一番確実だと思いますけれど手間はかかります。
手作業でHDR合成する場合、撮影時に基本露出としたカットをベースに飛んでるところはマイナス段で撮った部分を・暗く沈んでる箇所はプラス段で撮った箇所が見えるようにレタッチを行います。
但し、その360度写真の目的がアート寄りの作品でないならばできるだけ自然な明暗を残しておいたほうがいいと思います。
場合によってはレイヤー重ねて作業はじめたものの殆ど基本露出のカットのみになった… ということもあります^^
HDR処理後のEquirectangular
2007年 東京池袋サンシャイン60付近 |
普段360度写真撮る時はHDR前提で素材撮影していますからブラケティングで撮るのですが、
風が強い日の屋外で近くに木々がある場合・・・ 風で揺れ動く枝や葉っぱ。。
これ、いくらシャッタースピードが速くても1押し3枚撮ってるうちに必ずズレが生じています。
ブレ範囲が微小ならばHDR処理ソフト側で補正されますがその範囲を超えるともうどうにもならなくてブレが出てる絵が出来上がってしまってかなりガッカリ。
手作業で根気よく地道に3露出画像からパーツを取捨選択していけばいいかもしれませんが現実的な作業時間を超えてしまいそうです。そのあたりはどのへんまで妥協できるかです。
こういう場合、その多くは基準露出の絵のみでいく(非HDR)と割り切るか、ブレが出てる木々は基準露出の絵に任せて、建物など風関係なく静止状態にあるメインの被写体はHDRとするなど能動的な手作業を選択するかになります。
例えばPTGuiProはHDR合成したEquirectangular + HDR合成前の3つのEquirectangularの計4枚を出力することもできますから、後者の作業にはけっこう便利です。
追記)私自身は使ったことがありませんが、LGCで得た情報によるとHDR合成時に木の葉の揺れなどをある程度飲み込んで処理してくれる(つまりゴースト除去機能)ソフトもあるようです。
それぞれ一長一短はあるようですが、どういう絵づくりを目指すかという部分で要求とマッチすればとても強力なツールになるような気がします。
HDRで撮る場合に留意すること
HDRを知ると風景写真などダイナミックレンジの広い場所での写真が扱いやすくなるのは確かです。
但し、選択肢が増えますからそのぶん絵の中のどの部分に注目してほしいか撮影の目的をハッキリさせておかないと、どの箇所も適性露出で面白みのない写真になってしまうことが多いです。
そこで更に注意なのですが、Googleマップに投稿する目的の360度写真は撮影者の趣旨をどの程度出すのかけっこうシビアな部分があると思うんです。
HDRで処理する目的の一つは黒つぶれ・白飛びを極力押さえて一枚の写真の中の情報量を増やすことです。
つまり不特定多数の閲覧者がいると仮定して誰がどこを見たいのか… もちろん撮影者にはわからないので概ねどの箇所にも不自然にならない程度に露出を合わせておこう〜というのが一義であり本来の目的なのですが、機械的に処理するのはやっぱり楽しくありませんしGoogleストリートビューカーで自動で撮っていくのと変わらないです。
撮影するからには、この360度写真は特にこの被写体に注目してほしいな・・・というのはほしいですね。
黒子に徹しつつも少しはそういう部分も出しておきたい・・・的な^^
ひとつの作例
デジカメのブラケティング撮影ではだいたいの場合基準露出を元に+2.0 −2.0(カメラによっては±3.0)となりますが、
被写体や意図した画像を得るためには2.0(3.0)では足りない! もっと広いダイナミックレンジがほしい!…というケースが度々出てきます。
例えば暗い室内をきっちりおさえたい。窓の外の風景も…きっちりおさえたい そんなケースです。
もっとも、こんな無茶な要求に余裕で応えられるのは上述ラインスキャンカメラのみで、3〜7露出でしか抑えられない普通のカメラで基準露出から±値を極端に離して素材をおさえてもできあがったHDRは違和感しかない絵になると思います。
それ以前に±を大きくするほどそのHDRは階調破綻を内包していることになります。
そこで意図した絵の内容次第にはなりますが、グループ分けの撮影を行う・・・ と、いう手段が考えられます。
全ての明るさ範囲をブラケット撮影で無理やり繋げてしまうのではなく、明るさのグループでわけてしまうという発想です。
1.車の車内をブラケット撮影でおさえて、、HDRのEquirectangularにしてから窓を抜き
2.別撮りで外の風景をブラケット撮影でHDRのEquirectangularとして用意
3.レイヤーとして外の風景の上に車内を置いて、、PhotosphereXMP埋め込めばGoogleフォトで見せられます^^
リンク先でこの360度写真が見れます。 |
この手法はご覧のとおり、ややCGっぽい印象を受ける絵になりやすいです。
つまり自然の風景描写にはあまり向きません。
用途としては人工物が関わるもの… 例えば商品カタログ的な意味を持つ案件などで対象物をフルCGでなく実写を使用しつつ絵作りする必要がある場合など…
もちろん他のケースも考えられますが、用途が限られるとは言え選択肢としては有用だと思います。
余談ですが、高額商品のカタログ向け撮影では通常屋外撮りは行いません。
計算された均一でやわらかい光線が必要なためですが、更にテカリ防止スプレーも併用します。
ひとつの作例…をヒントにして
この車内&外風景の作例は極端な例ですが、
例えば部屋の側面が極端に大きな窓 or 開放状態で広い範囲に昼間の外風景が見えているような状況下で、部屋内&外風景を両立させる写真を撮るようなケースはけっこうあるかもしれません。
こういう場合は
先ず部屋内に基準露出を合わせてブラケット撮影(一周廻して)をして、、三脚動かさず更にもう一周。
今度は外風景に基準露出を合わせて(これもHDRで撮っておくと良い)撮影を行います。
この2つのEquirectangular写真をそれぞれレイヤーに放り込んで、ここでの作例のようなレタッチを行えば考える限り最善の結果が得られます。
※もし窓が小さいのなら普通のスチル写真を同じ位置から窓に向けて1枚撮っておいてハメコミ合成などでも良いですが。。
ブラケティングでおさえられない罠
抑えられないというか、意図した露出が得られないという意味ですが、これは主に白トビとして出てくる現象についてです。
今のカメラには最適露出を得るための機能が内蔵されていますから、そのサポートを受けながら撮影者の私達は明るさ/暗さの判断で露出調整を行いますけれど、人の目が捉えられる波長には範囲がありますから
例えば赤外線・紫外線で振幅が大きく出ている(光量がプラス方向に強く出ている)場合であってもそれを光量の強さとは認識できません。
※振幅幅の大きい赤外線は光量でなく暖かさに。紫外線は…光量感じることもなく眼に無数の傷ができます。
カメラのセンサーにはそれを想定して、人が見ている波長範囲のみを通せるように(人が見たものと同じものがセンサーで捉えられるように)フィルター層がのせてあるのですが、それは100%完璧とは言えないのでどうしてもすり抜ける波長が存在します。
そして、もしその波長の振幅が大きかった場合・・・・
センサーは電荷(光量)としてそれを見てしまっていますから白トビが発生してしまいます。
もしそれが画面内広範囲にあるのでしたらカメラ側の露出検出と判断機能がうまく働くのですが面積が小さい点光源でそれが照らす範囲もそれほど大きくなかったらスルーされてしまいます。
特機に属する特殊用途カメラは写す対象が決まっている場合が多いのでIRカット・BP・SCフィルターを多層に蒸着してこの問題を100%封じ込めているのですが、一般的なカメラでその都度あらゆる被写体を写す機材では万能対抗策はありません。
魚眼レンズの場合は内側にゼラチン・アセテートフィルターを挟み込めますから撮影結果を見ながら色々試してみるしか手段がありませんが、多分一番効率が良いのは通常のブラケティング撮影で3露出得るものを、基準露出を大きくずらして更にもう一回まわして6露出にしてHDRを試みるとかだと思います。
上述の「ひとつの作例」で紹介した方法と併せて、こういう手法もヽ( ´ー`)ノ
追記
ブラケティングの機能・設定範囲は出来上がりのHDRにかなり影響与えますからカメラを選択する際など、このページを参考にしてもいいかもしれません。
関連項目
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